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 Paragraph  2009 バックナンバー

 

   2009年 12月号

 

 11月に入ると一段と警察官が多くなった。東京サミット以来の光景である。12日、先導車を付け黒塗り車が走り去った。テレビを付けると、皇居前で御即位二十年国民祭典を放映。6時半に両殿下も参列。暗闇に揺れる提灯、慈愛に満ちたご様子は平安を守る象徴に見えた▼14日、サントリーホールで、米オバマ大統領が「地球を傷つけずに経済発展するには、最高の科学者、技術者、起業家の叡智で新しい産業に繋ぎ、核兵器の無い世界を共に作っていこう」とスピーチ。終了後カラヤン広場に名演説に高揚した人々が溢れ、その中で宜野湾伊波市長が、普天間基地問題を熱心に訴えていた。横では毎土曜日開催されるヨーロッパの市場を模したマルシェで買い物客がのんびりと楽しんでいた▼在日米軍施設の約23%が沖縄で、それは沖縄本島の20%に当たる。中でも普天間基地は市街地に隣接し宜野湾市の25%を占める。その犠牲の上に日本は安全と繁栄を手に入れた。この痛みをシェアしてゆきたい▼15日、イエメンでJICA(国際協力機構)小学校建設支援従事の真下武男氏が誘拐拉致。23日に解放。会見場には70人の部族長が、ターバンに腰帯、月形の短剣・ジャンビーアを差し同席。異文化の奥深さを感じる▼19日、27ヵ国、5億人の舵取りに、EU(欧州連合)初代大統領にベルギーのヘルマン・ファン・ロンパウ氏、外相に英国のキャサリン・アシュトン女史選出▼20日 、菅直人副総理がデフレ宣言。27日、1ドル84円台。元気が良いのは外貨ショップでドルを買う行列だけ▼30日、米科学誌「ネイチャー」に、慶應大学研究チームが万能細胞から心筋細胞を作り、選別移植を開発と掲載。定着率は従来の1~3%から90%以上となる。予算削減で来年度からは、この様な研究も続けられなくなるのだろうか。

 

   2009年 11月号

 

 1989年11月9日ベルリンの壁崩壊。街が分断されて28年。それは世界平和の前兆に見えた。翌1990年、フランクフルト・メッセ取材の折に立ち寄ったが、東西ドイツ統一の7ヶ月前で、ブランデンブルク門の上の4頭馬車に乗る勝利の女神の杖頭は、鷲と鉄十字が外されたまま丸い輪だけ。後ろに大きく東ドイツの旗が翻っていた。今年は壁崩壊20周年の祝典に沸く▼霊南坂教会脇の大きな栃の木が、4センチ程の丸い実を沢山落していた。殻の中の栗によく似た実は、渋みが強く鹿しか食べないという。欧米では同種のマロニエの実は食さないが、日本では丹念に渋みを抜いて栃餅を作る。飢饉の時に山に残る大切な資源であった▼ガリレオ・ガリレオが天体望遠鏡を作り、月の観測を始めて400年を記念し、今年は「世界天文年」。10月22日、相模湖にオリオン座流星群を見に行った。午前1時半仰向けになり天空を仰ぐ。眉月は7時半に沈んだが、微かに靄がある。オリオン座と双子座は容易に見つけられ、昴の外側に星が飛んだ。続けて西の空に流れる。シリウス、プロキオン、火星、カペラと天頂に昇り、北を見ると北極星。淡く短いものや流星群でないものも含め30分間で7個。久しぶりに広い夜空を堪能した▼オリオン座流星群の母天体は、1986年に地球に近づいたハレー彗星。今回の大流星は、約3千年前、ハレー彗星が太陽接近時に、雪玉状の核から溶けたダストの帯の辺りを地球が通る為で、次回周期は約70年後。その時も星を楽しめる地球であって欲しいと願う▼25日、ベト君に双子が誕生。「富士山」と「桜」にあたる名を命名。ベトナム戦争の枯葉剤影響による結合双生児として、彼は日本人が反戦を思う象徴的存在である。

 

   2009年 10月号

 

 昭和28年頃、父に連れられ幾度か明石町辺りから和船に乗った。佃の渡しが無くなったのが昭和39年なので、その頃はまだ辺りに船が沢山あり、貸してくれる所があったのだろう。細い運河の前に聖路加病院の十字架の尖塔が聳えていた。船はゆっくり隅田川に出る。子供の目には大海である。近くに勝鬨橋が見えた。貨物船を縫って進むと、その大きさに怖かったが、父は得意気に櫓を操った▼9月14日、知人の船で夢の島マリーナから湾岸散歩を楽しんだ。お台場の自由の女神の後姿を愛で、レインボーブリッジを抜け高層ビルの並ぶ景色を眺める。東京タワーも今や摩天楼ではない。竹芝、浜離宮、築地市場を過ぎ勝鬨橋を潜った時、突然56年前を思い出した。同日、天皇ご一家も葉山で船に乗られ、陛下が和船の櫓を漕いでいらした▼東雲水門には「止めるぞ高潮、守るぞ都民」と大きく書いてある。東京湾には19の水門がある。職員の方に感謝▼11日、全長10b、直径4.4bの補給機{HTVーHU Transfer Vehicle(HUロケットで打ち上げる輸送機の略)}が種子島から発射。18日、国際宇宙ステーションとドッキング。物資や機材が運び込まれた。不要になった物が収容され11月大気圏で燃え尽きる予定。日本の宇宙技術の進歩が目覚ましい▼16日、第93代鳩山由紀夫内閣発足。ニューヨークにて23日、気候サミットで90年度比で25%減を公約。24日、安保理首脳会合にて非核三原則を誓い、国連で「ユーアイ」精神を宣言▼19日、徳冨蘆花の蘆花忌。武蔵野の雑木林の芦花公園内に夫妻の墓と自宅がある。桜桃忌のように若い人達が押しかける訳ではないが、家は開け放たれ中庭で講演会が有る。松風の中、出席者の蘆花の初恋談義が活発であった。

 

   2009年 9月号

 

 8月3日、裁判員裁判スタート。世界初の試みで英語ではlay judge(素人裁判)。小泉改革の一つだが、突然手術室に連れ込まれメスを渡された気分である▼11日、ユニス・ケネディ・シュライバー(88)死去。ケネディ家九兄妹の三女で知的発達障害者のスペシャル・オリンピックスの創始者。軽い知的障害の長姉ローズマリーは、1941年23歳の時にロボトミーにより重度障害者となった。3歳下のユニスは1962年に自宅庭に35人の知的発達障害の人達を招きスポーツキャンプを催した。1968年に第一回国際大会を開催。現在約200ヶ国、280万人の選手が参加する。各地域でのイベントも含めて複数形でオリンピックスと呼ぶ。日本では細川佳代子元首相夫人が尽力し、来年は第5回夏季、2012年に冬季全国大会を開催。現理事長は有森裕子氏▼15日から23日、ブランデンブルク門の下ベルリン世界陸上。ジャマイカのウサイン・ボルト選手が 100m9.58秒。200m19.19秒。村上幸史選手はやり投げで銅。尾崎好美選手が女子マラソンで銀▼18日、金大中氏死去(85)。1973年東京から拉致。1997年大統領就任。2000年平壌にて南北首脳会談。同年ノーベル平和賞受賞。日本語が堪能なこともあり日本人には近さを感じさせる人であった▼25日、ケネディ家の末弟エドワード上院議員(77)死去。兄達同様に「弱者救済」を信条とし、姉達の活動の支援も熱心だった。オバマ大統領成立の立役者でもある▼30日、衆議院総選挙。自民党が300議席から119議席へ。民主党115議席から308議席へ。アジアの片隅の平和な国を子供達に残せるのか。今後の国民の力も問われている▼甲子園で高校野球の沸く最中、15日、新型インフルエンザによる初の死亡者。31日に8人目の犠牲者。防御はうがいと手洗いだけ。科学や医学がこれほど進んでも、ウイルスの猛威を防げず秋に入る。

 

   2009年 8月号

 

聖池に咲く蓮
回廊のデヴァター(女神)
中庭に佇む僧侶

 学生の頃、蓮の花の開く音が聞きたくて早朝、鎌倉八幡宮の源平池に行った。花の開花は既に始まっていたが、4割ほどはこれからである。耳を欹(そばだ)てるが、花はゆっくりと無音で開いていく。やがて池は一面紅白の蓮で埋まった。カンボジアでは至る所に蓮の花がある。水面から真っ直ぐに伸びた茎に、中輪の艶やかな薄紅の花弁を広げる。多くの仏像が蓮華の上にいる様に、ヒンドゥー教でも聖なる花▼アンコール・ワットの西参道は長さ約200b、幅12bの堀に架かる石橋。参道の中央から南の右半分の幅6bの部分は綺麗に整備され歩きやすい。アンコール遺跡の研究家・上智大学石澤良昭学長の30年に渡る遺跡復活プロジェクトの一環の成果。カンボジア人の修復技術習得を目指し、この参道は宮石工の小杉孝行氏が11年の歳月をかけ成し遂げた。北側の左半分はフランス極東学院が40年ほど前に修理した。西門をぬけると堂宇が聳(そび)え、蓮の広がる聖池に逆アンコール・ワットが映る。この奥にヒンドゥーの神々の壮大な絵巻壁画が広がる▼8日、ラクイラ・サミット開催。「経済危機」、「気候変動」、「核軍縮」。どれも8ヵ国で治まる問題ではない。G14、G20になる日も近い。閉会の9日、リビアのカダフィ大佐とオバマ大統領が握手▼40年前の21日、アポロ11号月面着陸。月面でアームストロング船長のスローモーションに歩く姿、切れ切れの「That's one small step for a man, one giant leap for mankind(一人の人間には小さな一歩だが、人類には偉大な飛躍)」という声。町のテレビの前は人だかりとなった▼58年4月19日、煤を着けたガラスを手に校庭に出た。教師のかけ声で空を見上げる。あの頃の東京の空は広く、子供の数も多かった。記録を見ると、太陽は13時19分に88%欠けている。22日、日食グラスも手に入らない為、慶應大学の日食イベントに出席した。中国の湖北省武漢(ウーハン)、上海、悪石島、硫黄島からの中継である。武漢は曇り空だが、カメラは雲越しに太陽を捉えた。第2接触時のダイヤモンドリング、皆既、真黒な月の周りに白くコロナが揺れ、円の真上でプロミネンスが赤い小さな口をパクパクさせるように動いている。太陽表面にあるコロナは満月と同じマイナス13等。いつもは太陽が43倍明るいので見えないが、月が太陽をすっぽりと覆うと突如現れる。地球に飛んでくると、彩り豊かなオーロラとなる。好天の硫黄島の皆既後のダイヤモンドリングを見届け外に出る。薄雲の空に4割ほどの太陽が白く輝き浮かんでいた▼29日、財務省が4月から6月期の景気上方修正。定額給付金、エコポイント、エコカー減税と景気対策は功を奏した様だが、選挙の結果はどうなるか▼30日、銀座のミキモトの前を通りかかると、大輪の大賀ハスを中央に8種類の蓮の花が咲いていた。大賀博士が51年に検見川の東京大学院植物実験場で発掘した、3粒の二千年前の古代ハス。そこで育てた蓮を展示。清麗な花々の競演は真珠の輝きに優っていた。

 

   2009年 7月号

 

 6月1日GM破産法申請。戦後、全てが輝いて見えた米国の象徴だったアメリカ車。「驕る平家は久しからず」の一節が浮かぶ▼8日、朝テレビかから流れるラフマニノフ・ピアノ協奏曲第2番に心を奪われた。全盲の辻井伸行君(20)、第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール優勝。同時優勝の中国の張昊辰(チャン・ハオチェン)(19)はいかにも晴眼者のピアノで精密で素晴らしい。辻井君は一つの音も疎かにせず心を込め弾く。母いつ子さんの本には、いつも最高のものを与えようとした日々が綴られている▼10日、関東梅雨入り。風に吹かれ紫陽花が頭を揺らす▼18日、移植法改正案、WHO(国際保健機関)の規定に沿うA案が衆議院通過。現行法は12年前に成立。この時点で15歳以下の移植は正式に禁じられ、一億円以上の費用を工面し渡航して手術を待つが、間に合わない例も多い。他国の臓器移植なら良いという日本の姿勢に国際的批判は高い。輸血拒否の宗教もある様に考えは色々だろうが、参議院の結果が気になる▼ブレイン・マシーン・インターフェイス(BMI)は、欧米は電極を脳に直接さす侵襲法だが、日本は端末を付けたキャップを被る非侵襲法の研究が盛んである。念じて機械を動かすわけだが、身体の負担が少ない分誤差が出やすい。30日、理化学研究所とトヨタ自動車などの研究チームがノートパソコンで解析し、電動車椅子を左右に旋回しながら前進させた。解析時間は125_秒、精度95%以上。脳科学の発展が、身体を動かせない難病の人達の光明になる日も近いのではないだろうか▼発売日に上巻が完売となった「1Q84」。 8刷目をやっと入手。イスラエルでの卵と壁のスピーチが、一段と理解できる内容である。

 

   2009年 6月号

 

 5月11日、民主小沢代表辞任。露プーチン首相来日。北方領土問題は進展が無いまま、原子力協定に署名。人参をぶら下げられた馬の気分▼20日、国際宇宙ステーション(ISS)にて散髪、歯磨き、掃除等の日常生活を紹介した若田宇宙飛行士が、21日は尿などの再利用水を美味しそうに飲む▼35年前、スイスに滞在した折、東京の公害をよく尋ねられた。マスク姿が教科書に載り、公害の為と書かれていたようだ。咳の飛沫を他人に掛けぬ配慮、と説明するが納得しない。確かに外国の街中でマスク姿は見かけない▼英国は19世紀からイネ花粉の枯草熱が有名で、今のロンドンも公園や庭の芝生の花粉アレルギーの人が多いのだが、矢張りマスクはしない。十年来住む姪は、只我慢しかないと溢(こぼ)す。メキシコのマスク姿の配信で、少しは認知されたであろうか▼鉄壁の水際と思われた新インフルエンザは、あっさりと日本に侵入。16日に神戸の高校で国内感染が確認されると、31日迄に379人感染し世界第4位の感染国に▼WHO(世界保健機関)は29日、53ヵ国、15,510人感染、死者99人と発表。南半球は本格的な冬に入る。スペイン風邪の歴史を見れば、間もなく飛躍的に広がり、北半球の夏の終わりに、ウイルスは強くなり戻る。タミフルに耐性を持つことも予想される。防御失敗の検証を9月までに終えねばならない▼1919年に猛威を振るったスペイン風邪の後は、1957年にアジア風邪、1968年に香港風邪、1977年にソ連風邪が流行した。ウイルスは遺伝物質を持つが非生物で、細胞に寄生して増殖する。医学の祖ヒポクラテスが『毒』を意味するラテン語を使い、日本ではそのまま「ウイルス」とラテン語音で表記するが、ガーデニングの分野では「バイラス」と英語音で呼ばれている。病気も戦争も根絶するのは難しい事だと、人間の弱さを感じる日々である。


 

   2009年 5月号

 

 4月5日、午前11時30分、北朝鮮ミサイル発射。日本を越えて太平洋に落下。武器を持たぬ事で平和を体現した64年間が問われている▼拙宅の480bほど南南東に東京タワーがある。50年前、寺や大使館、大名屋敷跡や仕舞屋(しもたや)が並ぶ地に、突如積み上っていく鉄骨は、やがて赤と白に塗られ完工日の12月23日を迎えた。よく晴れた日で、余りの混雑にエレベーターを諦め、約600段の外階段を上った。地上150bの景色は、初めて見た鳥瞰図で、国会議事堂や東京湾の景色に感動した。平成元年にライトアップされた時は、落ち着かぬと思ったが、今は慣れた。10日、天皇皇后陛下金婚式は金色になり、その上を白く輝く15夜の月が通って行った。14日から20日の国際オリンピック委員の視察中は、オリンピックの5色になり華やいだ▼69年の最初のレコード発売日の22日が「カーペンターズの日」となり、日本で40曲入りCDが発売されリチャード・カーペンター氏来日。当時、新宿駅西口は反戦フォークソングを歌う若者で溢れ、東口はヒッピーやフーテン族が日がな寝そべっていた。反戦歌が多い中、強いメッセージを持たない彼等の静かな歌声は今も人々を魅了する▼27日、国際宇宙ステーション(ISS)にて若田光一宇宙飛行士が、小学生から募った「おもしろ実験」を行った。微少重力でバック転やオーバーヘッドキックは見事に決まったが、ラジオ体操は難しく地上と逆転した▼豚インフルエンザ(A型H1N1)は30日にレベル5となり、パンデミック(世界的流行)の6に近づいた。4月末でメキシコ感染者千人、死者152人▼パンデミックはギリシャ語が語源でパンが「全て」、ディモスが「大衆」を意味する。パンテオン、デモクラシー・・・・・よく知られた言葉を改めて納得した。


 

   2009年 4月号

 3月3日、ドイツ独ハノーバー情報通信技術見本市(CeBIT)が開幕。人間型ロボット「ローリン・ジャスチン」はその名の通り、足は4輪で月面ローバーのように動く。括(ねじ)れの多い上半身は蟻のようだが、飲み物を作ったり、アップテンポで踊ったりして人気者である▼23日、独立行政法人産業技術総合研究所開発のヒューマノイド「HRP-4C」が東京ミッドタウンのファッションショーに登場。平均日本女性の体格で、ほぼ人間に近い動きをする▼28日、六本木アートナイト開催。六本木ヒルズに現代アートが集まり、ヤノベケンジ氏の機械彫刻7bの「ジャイアント・トらやん」ロボットも出現。埴輪の様にも見えるが、アトムをイメージし、頭には似たような尖った物がついている。子供達の声で目を覚まし、歌い、踊り、「怒れ」と言われて火を噴く。ヤベ氏は97年にアトムスーツ型の防護服で、86年に眠り姫の城のように、歩みを止めたチェルノブイリを訪れている▼31日、脳波と脳血流を計るセンサーヘルメットを被りイメージすると、アシモの右手、左手、足、舌が作動。早期の難病の方々の医療実用を願う▼カナダのトュラン氏が07年に2ヶ月24,000ドルで創ったロボットは、予算の関係で2足歩行は未だ出来ないが、日本語と英語を操り、計算をし、痴漢撃退のパフォーマンスもできる。日本のアニメを見て育ったという氏は「Aiko」と名付け日本女性の姿。「HRP-4C」が少女ならばこちらは大人の女性の美しさ。国家や会社に寄らずに、これだけの物が低価格で実現するのならば、介護などのロボットの実用化も遠くない▼16日、「ディスカバリー」打ち上げ成功。26日より若田光一宇宙飛行士は、国際宇宙ステーション(ISS)での3ヶ月の宇宙生活に入った。28日ソユーズが交代クルー2人と旅行者のチャールズ・シモニーを乗せ到着。01年より始まった宇宙旅行は今年で7回目。シモニー氏は07年にも訪れている。4月7日に帰還予定▼2月に米国人工衛星が北朝鮮のミサイル発射の動きを捉えて以来、舞水端里(ムスダンリ)の衛星写真は準備が整っていく様を伝え、29日、3段ミサイルが黒々と映し出された。27日、「弾道ミサイル破壊措置命令」発令。30日、アフリカ・ソマリア沖の海上自衛隊護衛艦警護を始動。31日衆参院は北朝鮮に自制を求める決議を全会一致で議決。日本でも迎撃準備が進んでいく。テポドンは64年間の平和を破る黒船なのだろうか。

 

   2009年 3月号

 2月3日、網走に流氷初日、19日接岸初日。観光砕氷船がニュースで放映された。知床半島のオホーツク海側の斜里町ウトロでは、流氷ウォーキングツアーも始まり、流氷に乗るアザラシの知らせも届き始めた▼ユーラシア大陸、アムール河の豊饒を含み、間宮海峡に流れ込んだ雪解け水の混じった汽水は、11月頃氷となる。川水が広がった海面の塩分濃度が下がり、凍りやすくなったオホーツク海を、氷塊を大きくしながら知床半島に向かい南下する。北海道のオホーツク沿岸はアムールの土壌の恵と、それに集まる海洋生物で賑わう。1905年アムール河支流での中国のベンゼン化合物大量流出はひやりとした▼13日の春一番を過ぎ、マスク姿が一段と増えた。蕾が開き芳香を漂わせる季節に、目鼻を覆う姿は、レイチェル・カーソン の「沈黙の春」(1962年)を思い出させる。女史は農薬を指摘していたのだが、目に見えぬ物に襲われているのが、人災である事に変りはない。16日、富山県が無花粉スギ開発成功を発表▼17日、ヒラリー・クリントン米国務長官来日。綿密な分刻みのスケジュールだが、真摯で誠実な人柄を印象づけた。嘗てアメリカが嚔(くしゃみ)をすると日本は肺炎になると自虐したが、今や支える杖らしい▼小泉元首相はモスクワでプーチン首相に会い、麻生総理はサハリンでメドヴェージェフ大統領と会見。18日、共に北方領土問題は4島に拘(こだわ)らないとロシアで発表▼22日、第81回アカデミー賞で加藤久仁生監督の「つみきのいえ」が短編アニメーション賞に、滝田洋二郎監督の「おくりびと」が外国語映画賞に受賞。日本人の感性が他国の人達の琴線にどの様に触れたのだろうか▼26日、リベレツ(チェコ)・ノルディックスキー世界選手権複合団体に日本が優勝。92年から4度手にした金メダルは、ルール改正で遠のいていた。14年かけ技術を磨き、工夫を重ね再び浮上。勝つ為に規則を変える欧米と、それを乗り越え続けてきた日本。いつの間にか日本製品は垂涎の的となり、日本食が席巻し、アキバ文化が流行っている。

 

   2009年 2月号

 今年は年の初めを感じにくかった。年末に派遣切りの人の為に、日比谷公園に「年越し村」が設置され、全国から約350人が集まり、周辺庁舎も解放された。又、12月27日のイスラエルのガザへの空爆は、1月3日の地上軍侵攻となり、18日の停戦まで、地中海に面し温暖気候の363平方キロメートルに住む人々の痛ましい報道が続いた▼7日、9月22日にエチオピアでオランダ人の看護師と共にソマリアに誘拐された赤羽桂子医師が無事解放。人道支援の難しさを改めて思うが、怯(ひる)み過ぎてもならないと思う▼60年代後半は学生運動が世界中を吹き荒れた。日本でも多くの大学が学生に占拠され、投石を避ける為に機動隊がジュラルミンの大楯を持つようになった。40年前の1月19日、東大安田講堂が機動隊により陥落した。大学事務員だった友人は、学校書類を守り走り回った日々を今も語る。東大全学共闘議長の山本義隆氏の地下潜伏先の大学生だった従兄弟は、白ジャンパーで演説し、終了と同時に同じ姿の男性4人が壇上に駆け上がりスクランブルして駆け下り、内偵の目を攪乱するのを見ている。不思議な縁で息子は予備校で同氏から物理を学び、おじいさん先生と呼んでいた。彼の参考書は受験生のバイブルになっている。70年代に入ると街から敷石が無くなった。そして当時大学生だった最後の団塊世代が今年60歳を迎える▼20日、第44代オバマ大統領就任。ライス前国務長官から米国の牽引は黒人の時代に入っていたのだろう。就任演説で「経済の疲弊は一部の人々の貪欲と無責任による」と明言。ミシェル夫人は70年代に流行ったブラック イズ ビューティーという言葉を思い出させる▼31日、朝からヒヨドリが20羽ほどが拙宅の飯桐の赤い実を啄(ついば)み、夕方には食べ尽くした。いよいよ冬も終わりに近づいた。

 

   2009年 1月号

 金星と木星が接近し、マイナス4等の金星の右上にマイナス2等の木星が並んだ。BC2年にも大接近があり、イエス誕生時の「ベツレヘムの星」とする天文学者もいる。12月1日は、更に下に三日月が通り、右に傾げたニコニコ顔になる。東京は曇りで見られなかったが、タイでは正面を向いたスマイリング・ムーンとなり人々が悦んだ。政情不穏で不安な日々に「天」からの贈物▼7日、益川敏英・京都産業大教授(68)、小林誠・高エネルギー加速器研究機構名誉教授(64)、下村脩・ボストン大学名誉教授(80)がスウェーデン王立アカデミーで記者会見。その後ノーベル博物館カフェの椅子裏にサイン。8日ストックホルム大学にて記念講演、10日授賞式及び晩餐会。全てを堂々と日本語で通した益川教授に拍手。同氏が600個買ったメダルチョコレートは、我が家でも10歳だった息子が、市庁舎の売店でノーベル賞のメダルが買えたと、大切に持ち帰り渡してくれた懐かしい思い出がある▼クリスマスの頃、毎夜8時になると東京タワーが7色の丸い光で覆われ、宝石箱のように輝いた。暖冬の為か、お年寄りから幼児まで、外国の方々も賑やかに、時折フラッシュを焚きながらタワーに向かう。近くのミッドタウンも、ピカソ展帰りに食事しようと思ったがどこも1、2時間待ち。車の数はめっきり少ないが、人出は例年になく多い。23日、今生天皇75歳、東京タワー50歳▼サンパウロから飛行機で1時間40南にイグアスの滝がある。密林に隠れていた大小300個、長さ4qの滝は、鉄を含み褐色の濁流となり80mの落差を流れ落ち、先住民が聖地と崇めていたのも頷ける。地球の偉大さを今一度噛み締めこれからの時代を作らねばと思う。

 

 

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